大阪地方裁判所 昭和30年(行)75号 判決 1956年5月29日
大阪市西区京町堀上通一丁目二十三番地
原告
政治
大阪市西区江戸堀下通五丁目
被告
西税務署長
塚原智教
右指定代理人
石井三男
同右
林義雄
同右
斎藤昭
同右
原田節夫
右当事者間の昭和三〇年(行)第七五号所得税決定処分取消請求事件につき、当裁判所は次の通り判決する。
主文
原告の訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告は「被告が原告に対してなした原告の昭和二十九年度所得金額を金三十六万七千二百円、所得税額を金五万九千三百五十円とする更正を取消す、訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求原因として、原告は被告に対し、昭和二十九年度所得として金二十三万九千二百十六円を申告したところ、被告はこれを請求の趣旨記載の如く更正した。原告は右金額に異議があるので被告に対し再調査の請求をしたが被告は昭和三十年八月六日これを棄却する旨の決定をした。然しながら右の更正は原告の所得を超過し、不当であるからこれが取消を求めると陳述し、原告が昭和三十年八月六日、再調査の決定の通知を受けたこと並にその日から一ケ月以内に審査の請求をしなかつたことはこれを認めると述べた。
被告は主文同旨の判決を求め、答弁として、被告が原告の昭和二十九年度所得につき、原告主張の如き更正をしたこと、原告がこれに対し再調査の請求をし原告主張の如き決定のあつたことはこれを認めるが、所得金額及び所得税額の更正に対しては、審査請求に対する決定を経た後でなければ訴を提起することができないのに、原告は本件更正に対し再調査の請求をなし、昭和三十年八月六日請求棄却決定の通知を受けたにもかかわらずその日から一ケ月の期間を経過するも審査の請求をしていない。従つて本訴は不適法であるから却下せらるべきであると陳述した。
理由
被告が原告の昭和二十九年度所得につき原告主張の如き更正をしたこと、被告がこれに対し再調査の請求をし、原告主張の如き決定のあつたことは当事者間に争いがない。思うに所得金額及び所得税額の更正の取消又は変更を求める訴は所得税法第四十九条第六項の規定による審査の決定を経た後でなければこれを提起することができない。しかるに原告がその主張の更正につき被告に対し再調査の請求をなし、昭和三十年八月六日棄却決定の通知を受けながらその日から一ケ月以内に審査の請求をしなかつたことは原告の認めるところである。すると本訴は不適法であること明かであるから、原告の請求につき判断をなすまでもなく、これを却下すべく訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。
(裁判長裁判官 乾久治 裁判官 入江教夫 裁判官 井上孝一)